ヨーロッパ中世政治思想 のバックアップ(No.6)
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16日の試験までに13問分(過去問8、教科書の研究課題5つ)の問題に回答する予定です。
目次 †
2018年4月試験 †
公会議運動において展開された憲法的なドクトリンについて答えさせる問題。
要点 †
- 公会議運動
- キリスト教徒全体を代表する公会議が、ローマ教皇の権力を制限しようとする運動のこと。
- 公会議運動の憲法的問題
- 教皇の同意なくして、公会議はいかに招集できるのか
- 会議を招集できるのは、最も権威のある者である
- 公会議は教皇に優越するどのような権威を持っているのか
- 公会議が優越していないと、教皇の権利を封殺できない
- 教皇の同意なくして、公会議はいかに招集できるのか
- 解決方法→憲法的なドクトリン
- 教会全体は、ローマ教皇に優越する
- 教会全体は、公会議によって代表される
- 以上の2つから、公会議は究極的な権威を持つ教会の代表とみなされ、憲法的問題が解決する。
- ドクトリンの帰結→代表理論
- 公会議に各地のキリスト教徒が代表を送り、基本的な問題を審議→代表や、代表を送る母体に権威があると考えられるようになる
解答例 †
公会議運動とは、14世紀から15世紀にかけて行われた、キリスト教徒全体を代表する公会議がローマ教皇の権力を制限しようとする運動のことである。当時の政治的混乱により、教皇が二人や三人になってしまったことが背景にある。
公会議運動には憲法的な問題が二つあった。一つは、教皇の同意なくして、公会議はいかに召集できるのかということである。会議を召集できるのは最も権威のある者であるから、公会議が自ら召集するためには、何らかの理論が必要である。もう一つは、公会議が教皇に優越するどのような権威を持っているのかということである。公会議が法的に優越していないと、教皇の権利を封殺できない。
そこで公会議運動では、二つのドクトリンが提唱された。一つは、教会全体がローマ教皇に優越するということである。このドクトリンに従えば、ローマ教皇は、教会の一部分、下部機関であるということになる。もう一つは、教会全体は公会議によって代表されるということである。以上の二つを認めるならば、公会議は究極的な権威を持つ教会の代表とみなされ、前に述べた二つの憲法的問題は解決する。すなわち、公会議は究極の権威を持つのだから自ら召集可能で、かつ、教皇の権力を制限することができる。
これらドクトリンの帰結として、代表理論というものが出来上がった。公会議には各地のキリスト教徒が代表を送り、基本的な問題を審議する。すると、代表や代表を送る母体に権威があると考えられるようになった。
(617文字)
2018年7月試験 †
ピピンのクーデターのヨーロッパ中世政治思想における意味を問う問題。
要点 †
- 出来事
- 751年、ピピンがチルデリッヒ3世を幽閉し、王位に就く
- この際、ローマ教皇ザカリアスに「いずれが王冠を被るべきか」と権威付与を委託した
- 背景
- フランク王国の衰退
- 「血のカリスマ」によって王が未成年のため、リーダーシップが欠如
- 人々がローマ・カトリックを信仰するようになった
- フランク王国の衰退
- 意味
- 政治権力の正当化原理を、ゲルマン神話からローマ教会のキリスト教に転換した(血のカリスマから官職カリスマへの転換)
- 同時に、政治的紛争の調停者としてのローマ教皇が誕生した
解答例 †
ピピンのクーデターとは、フランク王国の宮宰ピピンが、751年に当時の王チルデリッヒ3世を幽閉し王位に就き、カロリンガ朝を成立させた出来事のことをいう。
当時のメロヴィンガ朝フランク王国は、ゲルマン神話に基づく血のカリスマの統治が行われていた。血のカリスマとは、政治の正当化原理に、支配者及びその家族を神聖なものとする神話を使用することである。フランク王国は血のカリスマを採用したせいで未成年の王が続き、王のリーダーシップが欠如し衰退していた。
ピピンは、クーデターを起こすにあたって、ゲルマン神話とは異なる政治の正当化原理を採用する必要があった。そこでピピンが目を付けたのが、当時ゲルマン民族に広く受け入れられていたローマ・カトリックの信仰である。クーデターの際、ピピンはローマ教皇ザカリアスに、名ばかりの王チルデリッヒ3世と、実質的に王の権利を行使しているピピンのどちらが王冠を被るべきかと尋ねた。教皇ザカリアスは、ピピンが王冠を被るべきだと答えた。こうして、ローマ教会から正当な権威を付与されたカロリンガ王朝が誕生したのである。
ピピンのクーデターは、血のカリスマから官職カリスマへの転換ともいえる。官職カリスマとは、ある職位そのものの神聖性を認め、政治権力を正当化することである。特に中世ヨーロッパでは、キリストの第一弟子ペテロの後継者たる、ローマ教皇という職位自体が神聖であるとみなす立場のことをいう。カロリンガ朝は神聖なローマ教皇に権威を付与されたのだから、正当であるというわけである。ローマ教皇は
以上をまとめると、ピピンのクーデターのヨーロッパ中世政治思想におけるもっとも大きな意味は、政治権力の正当化原理をゲルマン神話からローマ教会のキリスト教に転換したことと、すなわち、血のカリスマから官職カリスマへの転換である。また、政治的紛争の調停者としてのローマ教皇が誕生したことも、ヨーロッパ中世政治思想において大きな意味がある。
(816文字)
2018年10月試験 †
「王は上位者を認めない」という命題について答える問題。
要点 †
- 12-13世紀ごろに教会法学者とローマ法学者が主張した命題で、王国内においては、王に対して命令する権威や権力は存在しないという意味。
- 王が皇帝に従属していないということ。
- 封建王政が絶対王政へと発展する礎となる思想
- 王(レックス)と皇帝(イムペラトール)の関係
- 皇帝とは、(西ヨーロッパ)世界全体の政治的主権者で、普遍的な存在である。
- 王とは、地方部族の首領が皇帝によって統治の権限を与えられたもので、領域的・特殊な存在である。
- 「王は上位者を認めない」ということの効果
- 合理性 = 政治的正当性の主張の必要性
- 普遍的な権威(皇帝)に依存することなく、自己の政治的正当性を立証できる
- 特殊である封建王政が、普遍である皇帝に対抗し、自分自身が普遍的であると主張することで、王政を展開できるようになる
解答例 †
「王は上位者を認めない」という命題は、12-13世紀ごろに教会法学者とローマ法学者が主張したもので、王国内においては、王に対して命令する権威や権力は存在しないという意味である。「王はその王国内において皇帝である」という命題とともに、封建王政が絶対王政へと発展する基礎となる、領域的主権の思想として展開された。
王(レックス)と皇帝(イムペラトール)という概念は、ローマ帝政下で成立した。皇帝とはローマ皇帝をいい、(西ヨーロッパ)世界全体の政治的主権者で、普遍的な存在である。王とは、地方部族の首領が皇帝によって統治の権限を与えられたもので、領域的・特殊な存在である。「王は上位者を認めない」という命題は、特殊な存在たる王の側が主張したものである。
政治を行うためには、正当性の主張が必要である。被支配者が支配者の権力を正当なものだと認めなければ、効率的な統治をおこなうことができない。そして正当性の主張は、合理的なものでなければいけない。合理的とは、支配者・被支配者が住んでいる社会の基本的価値概念、文化理念の文脈において、皆に納得されることをいう。皆に納得されない正当性には意味がない。合理的であることとは、新たな普遍の発見ともいえる。
「王は上位者を認めない」という命題は、普遍的な権威(皇帝)に依存することなく、王が自己の政治的正当性を立証できるようにするための、合理的な発想である。普遍的存在である皇帝に対抗し、王自身が普遍的であると主張することで、皇帝に依存しないで王政を展開できるようになる。この命題は、特殊たる王が正当な理由付けを探そうとして、説得力のある新たな普遍に辿り着いたものと評価することができる。ヨーロッパ文明が普遍性を追求するという特徴が表れている。
(735字)
2019年1月試験 †
新プラトン哲学の霊肉二元論がヨーロッパ中世政治思想に及ぼした影響について答える問題。
要点 †
- 霊肉二元論とは
- 霊魂と肉体、精神と物質という形で存在をとらえるやり方のこと。なお、
- 霊魂>肉体、精神>物質である。
- 政治思想への適用
- 霊魂代表の教会・教皇>肉体代表の帝国・皇帝という帰結になる
- 社会教説…世俗支配者よりも聖職者たちが優越した地位にいるべきという説
- 上下関係が規定されている→普遍的な神につながる
- このような秩序にいること=最大・最高の価値である
解答例 †
2019年4月試験 †
アリストテレス哲学の受容がヨーロッパ中世政治思想に対して有した意味について答える問題。
要点 †
- アリストテレス哲学=目的論的存在論
- 物事の存在意義と目的は、上位の事物の目的に奉仕することであるという考え方
- トマス・アクィナス以前→アウグスティヌス
- 人間社会は人間の原罪の結果である
- 現世はすべて負の価値(無意味・無価値)である
- 理性は劣った存在
- 神的秩序と自然的秩序に断絶があった
- 人間社会は人間の原罪の結果である
- トマス・アクィナス
- アリストテレス哲学の形而上学を換骨奪胎し、キリスト教的宇宙論を作った
- 存在の究極目的を神とした
- 自然的秩序と神的秩序が連続し、アウグスティヌスのテーゼが反転
- 「恩寵は自然を破壊せず、むしろ完成する」→自然が神の恩恵に浴する
- 理性が地位を復活、神に近づくための道具になった
解答例 †
2019年7月試験 †
「血のカリスマ」と「官職カリスマ」がヨーロッパ中世政治思想を理解する際に重要である、という命題について答える問題。
要点 †
- カリスマ支配とは
- 神が特定の人物に与えた特別な才能・有徳性=神聖性に対する帰依によって、支配がなされること。
- ex)アメリカ大統領制
- 血のカリスマとは
- 支配者およびその家族たちの間に、被支配者とは違う神聖な血が流れていると信じられている政治神話のこと。
- 「支配者としての特別の血統がある」という考え方なので、カリスマ性が伝統性に転換していく
- ex)徳川将軍家の正統性
- 官職カリスマとは
- 人間個人ではなく、職位そのものにカリスマがあるという考え方のこと。
- ex)ペテロの座
- ローマ教皇は、キリストの第一弟子たるペテロの後継者であるため、ペテロのカリスマが継承されていると考えられている。
- 何故両者が重要か
- 政治権力の正当性が何から付与されるのかという問題に答えるものだから。
- 751年のピピンのクーデターにおいて、血のカリスマが官職カリスマに転換し、以後宗教改革によって中世が終わるまでの間、キリスト教が権力の正当性の源泉になった
解答例 †
2019年10月試験 †
『平和の擁護者』(1324)について答える問題。
要点 †
- マルシリオ・パードヴァによる政治理論書。
- 目的
- ローマ教皇の権利を基礎づけている思想的原理を根底から破壊すること
- 内容
- アリストテレス政治哲学がベース
- 集団は、人間に内在する自然的本性が現実化することによって形成される。
- 人々は、正義に裏打ちされた法律によって秩序維持をするために国を建設する。
- 以上の議論にキリスト教は一切登場しない・必要ないので、ローマ教皇も必要ない。
- 意義
- 中世の伝統である自然法・神法の法的拘束力が否定された。
- 宗教的権威に依存する必要のない政治団体のあり方の基礎を提供した。
解答例 †
2020年4月試験 †
破門がヨーロッパ中世において有した意味を、具体例を上げつつ答える問題。
要点 †
- 破門とは
- 教会の典礼と進行も交わりから追い出すこと。
- 主に、ローマ教皇が皇帝に対る戦略的カードとしての意義がある。
- 破門が大変なことである理由
- 前提として、中世ヨーロッパはレスプブリカ・クリスティアーナである(要詳細説明)
- キリスト教徒であることによって、社会の正規の構成メンバーとして、名誉と権利と利益が認められる
- 破門されると、人間としての交わりからも締め出されるため、名誉と権利と利益がすべて奪われ、回復する手段がない。
- たとえ破門された人間を殺しても、罪に問われない。
- 実例→カノッサの屈辱
- ドイツ皇帝ハインリッヒ4世がローマ教皇グレゴリウス7世と争い破門され、1077年のクリスマスに、教皇の赦しを得るため三日三晩カノッサ城の城門に立っていたという事件
- 両者の叙任権闘争(聖職者を任命する権利をめぐる争い)に勝つために、グレゴリウス7世が破門の効果を利用した
- 破門に効果があるということは、11世紀後半にはキリスト教が人々に受け入れられたことを示す。
解答例 †
研究課題1 †
日本人が「ヨーロッパ」から何を学び、「ヨーロッパ文化」から何を受容しなければならないか答えよ。
要点 †
解答例 †
研究課題2 †
ヨーロッパ中世では政治権力の正当化がどのように行われたか答えよ。
要点 †
解答例 †
研究課題3 †
中世における「イムペリウム」と「サケルドティウム」の関係を説明せよ。
要点 †
- イムぺリウムとは
- サケルドティウムとは
- 両者の関係
解答例 †
研究課題4 †
アリストテレス政治哲学が中世政治思想に与えた影響について答えよ。
- →2019年4月試験と同様
研究課題5 †
封建王制は、自己の支配権力をどのように正当化していったか答えよ。
要点 †
- 背景
- 封建王制の特徴
- 正当化のロジック
解答例 †
研究課題6 †
ヨーロッパ中世の終わりの政治思想的意味を答えよ。
要点 †
- 中世の終わりとは